本を買った話

Twitterにいる読書家の人に感化されて、ここ一年は本をそこそこ買いました。殆どが積んだままになっているのでぼちぼち読みたいと思っているもののついSNSとかに時間を喰わせてしまう。買ったジャンルはいろいろですがまとまって(?)読んでひとつながりの感想を持ったのが三島由紀夫なのでその話をかきます。

 

2019年といえば近代文学を題材にした漫画『月に吠えらんねえ』(清家雪子、全11巻、講談社アフタヌーン)が完結したのだが、単行本が出るたびに繁く読み返していたこともあり、近代文学なるものを手に取ってみようという意欲が育っていたので、芥川龍之介の短編をいくつかと、Twitterで少々話題になった中島敦山月記』、三島由紀夫などを読んだ。

 

思い返せば小中学生のころは図書館に通う系ジャリンコだったので活字は人並みに読んでいて、海外文学の翻訳物(ハリー・ポッターにはじまりダレン・シャン赤毛のアン指輪物語ナルニア国物語)か、児童文学(斉藤洋那須正幹岡田淳)などが主食であった。中学にあがると上に加えて当時のラノベ橋本紡とか)にもほんのりとお世話になり、恩田陸宮部みゆきも流行ったタイトルも文庫になるのを待って読んだ。このころ『吾輩は猫である』『山椒太夫』など読んだ気もするがなにも考えていなかったと思われ感想がない。なおはじめに言及した漫画『月に吠えらんねえ』のメインでもある詩歌句の世界は、教科書には島崎藤村萩原朔太郎も何篇か載っていたが理解が及ばないままであり、かろうじて、朔太郎の『しづかにきしれ 四輪馬車』という一節と、中学のときの国語の試験で初出の詩をよんで「この詩のタイトルをア〜エから一つ選べ」という問題が出たので当時狭量だった私は知るかいなと一蹴してしまった不幸な出来事を記憶に残すばかりであった

詩題の事件を除けばそれなりの活字好きだったので、高校の教科書で相見える芥川龍之介羅生門』、中島敦山月記』、森鷗外舞姫*』などから近代文学に順当に進みそうなものの、新書や講談社ブルーバックスに招かれたせいか小説などの記憶がない。大学入った頃に村上春樹をいくつか読んだのを最後に小説はしばらくお留守にしてしまった。

(* まいひめの予測変換で舞浜が一番最初にでてきた、学習データの偏りがこんなところにある)

 

そんな私も漫画のおかげで王道・近代文学ルートに遅ればせながら参りまして、昨年の初秋ごろから手始めに三島由紀夫をよんでいる。といっても亀の歩みのようで、『金閣寺』、『豊穣の海』、『禁色』ときて一時休止、『仮面の告白』に手を出したのがいま。筋も凄いが研ぎ澄まされた日本語の凄みに感嘆してしまった。人間の孤絶や非道さに背負われた美というか、こういったものへ惹かれるのは少なくない人にとっては性であろうし、安易に厨二などと言って揶揄するのは勿体ないような気もする。といっても惹かれるばかりで腹を切るような壮絶な自我はない

クラシック音楽でいうとある日突然ショスタコーヴィチのグロテスクさに魅了されるようなのと似ていると思う

 

そんなわけで三島由紀夫『春の雪』(豊穣の海第1部)から好きな節を引用しておわります


卓の上にぞんざいに脱ぎ捨てられた花やかな絹のきものが、しらぬ間に暗い床へずり落ちてしまっているような優雅な死。

春の雪、新潮文庫(1977年版)p130